社用携帯を紛失した社員はクビにするべき?会社がとるべき対応や紛失のリスク、対策方法も解説
2025.05.29
社用携帯の紛失は、企業にとって情報漏洩や信用失墜など深刻な影響をもたらします。
紛失した社員には処分を求められる場合もありますが、懲戒解雇(クビ)といった厳しい処分をすべきか頭を悩ませる企業は少なくありません。
本記事では、社員が社用携帯を紛失した際の適切な対応と処分、企業が取るべき初動措置や予防策について詳しく解説します。
社用携帯の紛失を防止するための対策方法も解説しているので、最後までチェックしてください。
目次
紛失した社用携帯の約16.3%は手元に戻ってこない
警視庁が公表している統計によれば、携帯電話の遺失届出件数は年間20万件を超えており、そのうち約16.3%は所有者の元に戻っていません。
つまり、紛失したスマートフォンの6台に1台は見つからないという計算です。
また、デジタルアーツ社の調査では、国内企業で発生したセキュリティインシデントのうち、紛失・盗難が3位にランクインしています。
特に社用携帯は重要な情報が詰まっているため、紛失時のインパクトは非常に大きいと言えるでしょう。
社用携帯の紛失を他人事と捉えず、原因や対策方法を把握して、リスク回避に努めることが重要です。
【関連記事】
社用携帯の紛失によるリスクを防ぐ3つの対策|紛失時の対処方法や社用携帯導入時のポイントも解説!
社用携帯を紛失する原因2選
社用携帯の紛失事例の多くには、共通した原因があります。
よくある紛失原因を把握し、具体的な対策を講じることでリスクを大幅に低減することが可能です。
ここでは、実際に多くの企業で発生している代表的な2つの原因を紹介します。
①出先での置き忘れ
営業や出張、取引先との打ち合わせなどで外出した際、飲食店やカフェ、商業施設のテーブルや椅子に社用携帯を置いたまま立ち去ってしまう事例が非常に多いです。
とくに複数の予定を抱えている営業職では、慌ただしい移動中にスマホの所在を確認する余裕がなく、無意識のうちに紛失していることも珍しくありません。
また、モバイル決済や地図アプリの使用後に端末を放置してしまうなど、一時的な利用後の油断が原因となるケースもあります。
電車やタクシーなどの交通機関で社用携帯を紛失してしまうと手元に戻ってこないことも多いため、利用時には細心の注意を払うよう意識づけを行うことが重要です。
②盗難被害
電車内や繁華街などの人混みでは、スリや置き引きといった窃盗被害により社用携帯を失うことがあります。
特に鞄の外ポケットに無防備にスマホを入れていたり、テーブルの上に端末を放置していたりすると、犯人にとって格好の標的となるため注意が必要です。
また、社用携帯であることが明示されていない場合、加害者側が企業端末とは知らずに盗難を行い、結果的に企業に深刻な情報漏洩が発生する恐れがあります。
機密情報や企業の信頼を守るためにも、社用携帯の取り扱い方を今一度見直してみましょう。
社用携帯を紛失した場合の3つのリスク
社用携帯の紛失は、単なる物品の紛失にとどまらず、企業全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ここでは、社用携帯を紛失した際に発生し得る3つの重大なリスクを見ていきましょう。
①機密情報が漏洩する
社用携帯には、顧客情報、社内の営業資料、取引先とのやり取りを含むメール、クラウドサービスへのログイン情報など、機密性の高いデータが多く保存されています。
こうした情報が第三者の手に渡ると、個人情報を売却されたり、競合に重要な企業情報が渡ったりする恐れがあるため注意が必要です。
特に売却された情報は、詐欺やなりすましに悪用されて大きな事件に発展してしまう恐れがあります。
端末に画面ロックが設定されていない、クラウドと自動同期していたといった場合には、情報漏洩のスピードと規模が大きくなりやすいため、管理状況の見直しが欠かせません。
②企業の社会的信用を失う
社用端末からの情報漏洩が発生すれば、その影響は顧客や取引先にも及びます。
たとえ実際の被害がなかったとしても、情報漏洩が発生した時点で「管理体制が不十分な企業」とみなされ、契約の見直しや取引停止といった対応を取られるケースもあるでしょう。
また、ニュースやSNSなどを通じて企業名が公表されれば、風評リスクに発展し、企業イメージが長期間にわたって損なわれることも懸念されます。
情報漏洩は、取引先だけでなく顧客との信頼関係が崩れる原因となるため、不審なサイトへのアクセスを控える、携帯を手元から離さないなど、社用携帯の管理を徹底していきましょう。
③サイバー攻撃に遭う
紛失した社用携帯が悪意ある第三者の手に渡った場合、端末に保存されたログイン情報をもとに社内システムへ不正アクセスされる恐れがあります。
たとえば、メールアカウントを乗っ取られ、社内外に偽のメールが送信される、あるいはクラウドサービスを通じてマルウェアを送り込まれるといったサイバー攻撃が代表的です。
これにより、業務停止やデータの破壊といった二次被害が発生するリスクもあります。
サイバー攻撃被害を防止するためには、社用携帯の紛失を防止するのはもちろん、セキュリティ対策も欠かせません。
社用携帯を紛失した社員はクビ(懲戒解雇)にするべき?
結論から言えば、一度のミスで直ちにクビ(懲戒解雇)にするのは行き過ぎです。
ミスは誰にでも起こり得るため、まずは紛失状況の確認と再発防止に注力しましょう。
ただし、過去にも同様の紛失を繰り返している場合や、機密情報を扱う立場で重大な過失がある場合は、クビを視野に入れる企業もあります。
クビにするかどうかの主な判断基準は、以下の通りです。
- 故意・重大な過失がある
- 重大な情報漏洩を招いた
- 社会的信用を大きく毀損した
- 過去にも複数回の紛失歴がある
これらに該当する場合、企業はより厳格な処分を検討せざるを得ません。
ただし、懲戒解雇という重い処分を科すには、それ相応の根拠と社内規定の整備が必要です。
以下では、クビ以外に企業が取り得る現実的な対応策や社内規定について説明していきます。
社用携帯の実費請求
社用携帯を紛失した社員への対応として、最もシンプルに検討されるのが端末の実費請求です。
懲戒処分までは至らない軽微なケースにおいて、一定の責任を求める形で金銭的負担を課すことがあります。
端末本体の弁償を求めるケースもありますが、労働法上、明確な故意や重大な過失がなければ全額負担を命じるのは困難です。
加えて、全額負担は社員が社用携帯を使用したくないと感じてしまう原因にもなりかねないため、よほどのことが無ければ最小限の請求に留めるのが良いでしょう。
また、実費請求を行う場合は、就業規則や誓約書などの整備が必要です。
規則の改定に際して、社用携帯の運用方法や紛失時の処遇などを指導しておくことで、社員の意識を高めることができるでしょう。
被害の大きさに合わせた賠償請求
情報漏洩や信用の低下など、紛失による実損が大きい場合には、損害賠償を請求するケースも考えられます。
具体的には、顧客や取引先から賠償金を請求された場合や、会社の信頼が低下したことによる顧客の減少により売り上げが減少した場合に利用されることが多いです。
また、損害額だけでなく、漏洩した情報の内容に応じて損害賠償を検討する場合もあります。
企業側としては、被害の程度に応じた対応を取ることで、内部統制の強化と社員への抑止力につなげることが可能です。
ただし、管理体制の強度や紛失の経緯、社員の支払い能力なども考慮する必要があるため、慎重な判断が求められます。
なお、何度も紛失を繰り返すなどの悪質なケースであれば、実費請求や賠償請求に合わせて懲戒処分を下すことも可能です。
紛失による被害が大きい場合や社員の姿勢が改善されない場合には、戒告や譴責、減給、出勤停止などの懲戒措置を採るかどうか合わせて検討しましょう。
始末書・報告書の作成
損害額の請求や懲戒処分のいずれの処置を行うにしても、紛失の経緯や再発防止策を明文化した文書を社員本人から提出させることが重要です。
始末書を通して正確かつ詳細に事実を確認することができ、適切な処遇を決定することができます。
また、当事者の反省を促すだけでなく、企業の透明性を確保したり、再発を防ぐための具体的な対策を考えたりすることも可能です。
始末書の作成は、社内の情報管理体制を強化し規律ある職場環境づくりにも繋がることから、懲戒処分の有無にかかわらず、有効な対応策として多くの企業で取り入れられています。
社用携帯を紛失したときに行うべき4つの対応
社用携帯を紛失した際には、迅速かつ正確な初動対応が被害を最小限に抑える鍵となります。
紛失時に企業が取るべき4つの基本的な対応は、以下の通りです。
それぞれ詳しく解説します。
①速やかに会社へ報告してもらう
対応が遅れれば遅れるほど情報漏洩のリスクが高まるため、社員が端末の紛失に気付いた時点ですぐに会社に報告するよう、日頃から教育しておくことが重要です。
報告は、直属の上司または情報システム部門など、定められたルートに沿って行わせることで情報伝達がスムーズになります。
また、紛失日時・場所・状況・最後の使用履歴なども詳しく調査・ヒアリングすることで、対応のスピードと的確さを大きく向上させることが可能です。
速やかに状況を把握して、被害を最小限に留めましょう。
②遠隔ロックや位置情報のチェック
紛失が判明したら、まず優先的に行うべきは端末の遠隔制御です。
MDM(モバイルデバイス管理)を活用して、遠隔からの画面ロック、データ削除、位置情報の確認を迅速に実施しましょう。
これにより、拾得者や第三者による不正アクセスを防ぎ、端末の現在地を把握することができます。
MDM未導入の場合でも、iPhoneの「探す」機能やAndroidの「デバイスを探す」などの機能を使えば、一定の対応が可能です。
また、契約している携帯キャリアのカスタマーサポートやショップ窓口でも、回線の停止や端末位置の確認といったサポートを受けられる場合があります。
③情報漏洩の有無を調査する
次に、端末に保存されていた情報の内容を確認し、データが第三者に閲覧または送信された形跡がないかを調査します。
具体的には、メールやクラウドサービスのアクセスログ、社内システムへのログイン履歴などを確認しましょう。
不審な通信履歴が確認された場合には、社内だけでなく警察や専門機関とも連携して調査を進める必要があります。
④関係各所への連絡を行う
情報漏洩の可能性がある場合には、社外関係者への迅速な連絡が不可欠です。
対象となる顧客や取引先に対して、事情説明と謝罪、あわせて今後の対応方針や再発防止策を丁寧に伝えましょう。
また、個人情報保護委員会への報告も義務付けられているため、必ず報告書の提出や連絡を行ってください。
業種によっては、個人情報保護委員会ではなく監督官庁や委任先省庁への報告が求められるので、事前に報告先をチェックしておくと万が一の際にスムーズに対応できます。
なお、社内にも状況を共有し、全社員に注意喚起を行うことで、組織全体のセキュリティ意識を高めることが可能です。
社内外への連絡を行い、再発防止に努めましょう。
社用携帯の紛失を防止して安全に管理するための対策方法5つ
社用携帯の紛失リスクをゼロにすることはできませんが、日常的な対策を講じることでリスクを大幅に抑えることが可能です。
ここでは、企業が実践しやすく、効果的な防止策を5つに整理して紹介します。
①すべての端末にパスワードを設定しておく
パスワード管理は、最も基本的かつ重要な対策です。
端末の画面ロックを設定していないと、第三者が端末を拾得した際に中身を閲覧されてしまう恐れがあります。
特に、企業システムへのログイン情報やクラウドデータが端末内に保存されている場合、厳重なセキュリティ管理が欠かせません。
必ずパスワードやPINコード、あるいは指紋・顔認証などの生体認証を組み合わせ、堅牢なロック機能を有効化しましょう。
②スマホの探索機能を常時ONにしておく
社用携帯を紛失した際に最も重要になるのが、端末の現在地を特定できるかどうかです。
「iPhoneを探す」や「Googleデバイスを探す」などの探索機能をあらかじめ有効化しておくことで、万が一の紛失時にも速やかに端末を手元に取り戻せます。
社用端末にはこうした機能の設定状況を定期的に確認し、必ずONにしておく運用ルールを設けましょう。
③スマホストラップを使う
物理的な対策として有効なのが、スマホストラップや落下防止ストラップの活用です。
外出先での置き忘れや移動中の落下を防げるため、特に営業職や出張の多い社員には首掛け式や手持ちストラップを標準装備とするのが良いでしょう。
また、紐が長いためポケットやカバンの中でも社用携帯を見つけやすく、社員の小さなストレスを軽減することもできます。
スマホストラップは、わずかなコストで高い予防効果が期待できる手軽な手段のひとつです。
④セキュリティ教育を実施する
社用携帯は社員が利用するもののため、どれだけシステム面を整えても、最終的な管理は「人」に依存する部分が大きくなります。
そのため、社員一人ひとりが情報セキュリティに対する正しい知識と意識を持つことが重要です。
定期的な社内研修やeラーニングによるセキュリティ教育を通して、過去の紛失事例やその影響を共有することで、実感を伴った理解を促進できます。
また、社用携帯の運用ルールやマニュアルを作成して、社員に配布するのも効果的です。
いつでも運用方法を見直せるようにすることで、日頃から規定にセキュリティリスクに配慮した社用携帯の運用が行えるようになります。
【関連記事】
法人携帯で行うべきセキュリティ対策とは|対策不足によるリスクと導入時の運用ルールについて解説!
社用携帯の利用ルールに必要な項目5選!ルール策定のメリット・デメリットやポイントも解説
⑤MDMを活用する
モバイルデバイス管理(MDM)を導入することで、複数の社用携帯を一元管理することが可能です。
紛失時には迅速なロックやワイプ(遠隔データ削除)が行えるため、紛失による情報漏洩リスクなどを最小限に抑えることができます。
また、端末の位置情報追跡、OSやアプリの更新状況管理、業務に不要なアプリの制限なども行えるため、紛失防止と同時に業務効率化に繋げることも可能です。
社用携帯を利用する企業にとって、MDMの導入は必須であると言えるでしょう。
社用携帯を安全に導入するなら「法人携帯ファースト」にご相談ください

セキュリティ対策を講じたうえで社用携帯を導入したい方には「法人携帯ファースト」の活用が効果的です。
法人向けにリモートロックや初期化、位置情報の取得、端末機能の制限といったセキュリティ対策が可能な法人携帯を通じて、万が一の情報漏洩リスクに備えることができます。
また、セキュリティリスクを最小限に抑えるための運用ルール策定も相談できるため、導入後の運用も適切に行うことが可能です。
さらに、au、docomo、ソフトバンク、楽天モバイルの大手4社の中から自社に最適なプランを提案してもらうこともできるので、コスト削減も実現できます。
見積もりは無料なので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
社用携帯の紛失は、企業にとって情報漏洩や信用失墜などの深刻なリスクを招く可能性があります。
だからこそ、導入時点から管理体制や社内規定、利用ルールを整えておき、紛失リスクを最小限に抑えることが重要です。
万が一社員が社用携帯を紛失してしまった場合には、懲戒解雇(クビ)に踏み切る前に、状況に応じた冷静かつ適切な対応を行いましょう。
基本的には、実費請求や損害賠償の請求に留めておき、懲戒処分は紛失の経緯や被害状況に応じて行うのがベターです。
また、社用携帯の紛失に備えた運用に不安がある場合は「法人携帯ファースト」を活用することで、安心して社用携帯を導入・管理できる環境を整えることができます。
紛失対策や情報管理の強化に悩んでいる企業担当者の方は、ぜひ一度「法人携帯ファースト」に相談してみてください。