情報セキュリティポリシーとは?必要性と策定の流れを解説!
2025.07.30
情報セキュリティポリシーとは、企業が情報資産を様々な脅威から守り、安全に活用するためのルールや行動指針をまとめたものです。
策定することで、組織全体のセキュリティレベルを統一し、情報漏洩などのリスクを低減する重要な役割を担います。
本記事では、情報セキュリティポリシーの基本的な意味や、構成する3要素(機密性・完全性・可用性)を解説します。
さらに、策定の必要性から具体的な作成手順までを網羅的に紹介するため、これから策定を検討している担当者の方はぜひ参考にしてください。
目次
情報セキュリティポリシーとは
情報セキュリティポリシーとは、企業や組織が情報資産を様々な脅威から守り、安全に活用するための基本的な考え方やルールをまとめたものです。
簡単に言うと「情報セキュリティに関する社内ルールブック」のようなものだと考えてください。
企業が持つ顧客情報や技術情報といった「情報資産」は、企業の存続に不可欠な重要な財産です。
この情報資産をサイバー攻撃や内部からの不正な持ち出し、災害などから守ることは、事業を継続し、顧客や社会からの信頼を得る上で非常に重要と言えるでしょう。
ポリシーを策定し、社内で共有・徹底することで、組織全体で統一されたセキュリティレベルを維持し、情報漏洩などのリスクを低減させることができます。
情報セキュリティの3つの要素
情報セキュリティを確保するためには「機密性」「完全性」「可用性」の3つの要素を満たすことが不可欠です。
これらはそれぞれの英単語の頭文字をとって「CIA」とも呼ばれ、情報セキュリティの土台となる考え方です。
「機密性」「完全性」「可用性」 の3つの要素は、どれか一つでも欠けてしまうと、情報セキュリティが保たれているとは言えません。
例えば、情報漏洩を防ぐ「機密性」と、情報が正確である「完全性」が確保されていても、必要な時にデータにアクセスできなければ(可用性が低い)、業務に支障をきたしてしまいます。
3つの要素の概要は以下の通りです。
要素 | 概要 | 具体例 |
---|---|---|
機密性 (Confidentiality) | 認められた人だけが情報にアクセスできる状態を保つこと | ・ID/パスワードによるアクセス制御・データの暗号化 |
完全性 (Integrity) | 情報が不正に改ざん・破壊されることなく、正確で完全な状態を保つこと | ・変更履歴の記録・バックアップデータの保管 |
可用性 (Availability) | 認められた人が、必要な時にいつでも情報やシステムを利用できる状態を保つこと ・システムの二重化 | ・システムの二重化・災害時の復旧計画(BCP) |
このように、3つの要素をバランス良く維持・向上させることが、堅牢な情報セキュリティ体制の構築につながります。
機密性
「機密性(Confidentiality)」とは、許可された人だけが情報にアクセスできるように制限し、情報の漏洩や不正利用を防ぐことです。
企業には、新製品の開発情報や顧客情報、社員の個人情報など、外部に漏れてはならない重要な情報が数多く存在します。
重要情報へのアクセス権を役職や業務内容に応じて適切に設定し、管理することで機密性の確保につながるでしょう。
具体的な対策としては、以下のようなものが挙げられます。
- アクセス制御:IDやパスワード、ICカード認証などで、システムやデータへのアクセスを制限する
- データの暗号化:万が一データが漏洩しても、内容を読み取られないようにする
- 物理的な対策:サーバールームへの入退室管理や、書類の施錠保管を行う
ただし、ルールを厳しくしすぎると業務効率が低下し、形骸化する恐れもあります。
そのため、利便性とのバランスを考慮しながら、実効性のある対策を講じることが重要です。
完全性
「完全性(Integrity)」とは、情報が不正に改ざんされたり、誤って破壊されたりすることなく、正確かつ最新の状態に保たれていることを指します。
サイバー攻撃の中には、情報を盗むだけでなく、企業の信用失墜を狙ってデータを改ざんするものもあります。
また、悪意がなくとも、従業員の操作ミスやシステムの不具合によってデータが破損する可能性も否定できません。
完全性を維持するための主な対策は、以下の通りです。
- アクセス権の適切な設定:閲覧のみを許可し、書き込みや変更は特定の担当者のみに限定する
- 変更履歴の保存:誰がいつどのような変更を加えたかを記録し、問題が早期解決できる体制を作る
完全性を確保するためには、技術的な対策だけでなく、日常的な運用ルールの徹底や従業員への教育も欠かせません。
些細なミスや油断が大きなリスクにつながることを常に意識し、継続的な見直しと改善を心がけることが重要です。
可用性
可用性(Availability)とは、必要なときにいつでも情報やシステムを利用できる状態を維持することです。
この可用性が損なわれると、業務の停止や生産性の低下に直結し、企業の信頼性や顧客満足度に大きな影響を与えます。
例えば、サーバーダウンやネットワーク障害が発生すると、従業員は業務に必要なデータにアクセスできなくなり、サービス提供も滞ってしまうでしょう。
そのため、可用性を確保することは非常に重要です。
可用性を確保するための具体的な対策には、以下のようなものがあります。
- 冗長化:サーバーやネットワーク機器などのシステムに予備を準備し、障害発生時に自動で切り替わるようにしておくこと
- 負荷分散:アクセスが集中しないよう、処理を複数のサーバーに分散させること。1台が停止しても他のサーバーでサービスを継続できる
- 無停電電源装置(UPS):停電時にもシステムに電力を供給し、安全にシャットダウンする時間や、自家発電機が稼働するまでの時間を確保する装置
これらの対策を講じる際は、導入後の保守・点検を定期的に実施し、常に万全な状態を保つことが、可用性の維持には欠かせません。
情報セキュリティポリシーの必要性3つ
企業や組織が情報資産を守り、事業を安定して継続させるためには、情報セキュリティポリシーの策定が不可欠です。
ここでは、ポリシーが必要とされる3つの主要な理由を解説します。
①サイバー攻撃などのリスクから企業の情報を守る
情報セキュリティポリシーは、サイバー攻撃など、さまざまな脅威から情報を守り、事業を安定的に継続させるために不可欠です。
脅威には、大きく分けて「外部からの脅威」と「内部からの脅威」の2種類があります。
脅威の種類 | 具体例 |
---|---|
外部からの脅威 | ・サイバー攻撃(ウイルス感染、不正アクセスなど) ・なりすましメール |
内部からの脅威 | ・従業員の操作ミスによる情報漏洩 ・悪意のある情報の持ち出し ・関係者による不正行為 |
上記のような脅威は、企業の機密情報や個人情報の流出につながり、事業継続を困難にする可能性があるので注意が必要です。
情報セキュリティポリシーを策定し、組織全体で遵守することで、内外のリスクに対する防御策を強化できるので策定を検討してみましょう。
なお、情報セキュリティポリシーの策定は、情報資産を保護し、企業の信頼性を維持することにつながります。
②情報漏洩を防ぐ
セキュリティポリシーは、情報漏洩のリスクを低減させるためにも不可欠です。
企業の持つ情報の中には、顧客情報や新製品の開発情報など、外部に漏洩してはならない機密性の高いものが数多く含まれます。
これらの情報がひとたび外部に流出すれば、企業の社会的信用の失墜や、経済的な損失につながる可能性があるため情報漏洩の対策は欠かせません。
また、情報漏洩は外部からのサイバー攻撃だけでなく、社員の不注意や内部不正によっても引き起こされます。
以下で、情報漏洩の主な原因をまとめました。
原因 | 具体例 |
---|---|
外部要因 | ・不正アクセス ・マルウェア感染 |
内部要因 | ・ノートパソコンの紛失や置き忘れ ・メールの誤送信 ・悪意を持った社員による情報の持ち出し |
セキュリティポリシーを策定し、情報へのアクセス権限を適切に管理したり、データの取り扱いに関するルールを明確に定めたりすることで、こうした意図しない情報漏洩や悪用を防ぐことができます。
例えば、IDやパスワードによるアクセス制御や、重要データの暗号化といった対策をルール化し、全従業員に周知徹底することが重要です。
③トラブル発生時の迅速な対応を可能とする
情報セキュリティポリシーは、セキュリティインシデント(事故)が発生した際の行動指針としても機能します。
事前にルールを定めておくことで、誰が、何を、どのように対応すべきかが明確になり、混乱なく迅速に初動対応を開始できるのです。
インシデント発生時の対応フロー例
担当部署 | 対応内容 |
---|---|
発見者・従業員 | インシデントを発見次第、速やかに情報セキュリティ責任者へ報告する |
情報セキュリティ責任者 | 被害状況の確認、影響範囲の特定、関係各所への連絡を行う |
システム管理者 | ネットワークの遮断、不正アクセスのログ解析、システムの復旧作業を実施する |
このように、対応体制や手順をあらかじめ定めておくことで、被害の拡大を最小限に抑え、事業への影響を軽減できます。
万が一の事態に備え、全従業員がポリシーを理解し、日頃から訓練しておくことが重要です。
情報セキュリティポリシーの策定の流れ
情報セキュリティポリシーは、以下の流れに沿って策定を進めることが一般的です。
①責任者、担当者を選出
情報セキュリティポリシーの策定にあたって、まずは運用に関する責任者と担当者を選出します。
経営層を含む全部署からメンバーを集めることで、全社的な取り組みとして進めることができるためおすすめです。
②目的・対象範囲・運用期間を決める
次に、ポリシーを策定する目的、対象となる情報資産や組織の範囲、そしていつからいつまで適用するのかを明確に定義します。
これらを明確にすることで、ポリシーの適用対象や有効期間が曖昧になることを防ぎ、関係者全員が共通の認識を持って取り組むことができるようになるでしょう。
また、適切なリスク管理や運用体制の整備が行いやすくなり、無用な混乱や責任の所在の不明確さを回避することにもつながります。
③スケジュールを決める
策定から導入、そして見直しまでの具体的なスケジュールを設定します。
現実的な計画を立てることが、スムーズな進行の鍵です。
➃基本方針を策定する
企業のセキュリティに対する基本的な考え方や姿勢を示す「基本方針」を策定します。
これは、経営層の承認を得た上で、社内外に公開する企業の宣言となります。
⑤情報資産の洗い出し、リスク分析と対策を練る
社内に存在する情報資産(顧客情報、技術情報、個人情報など)をすべて洗い出し、それぞれにどのようなリスク(漏洩、改ざん、紛失など)が存在するかを分析します。
分析することで、どの情報資産が重要で、どのような脅威にさらされているかを明確に把握できるようになるでしょう。
その結果、リスクの高い資産に対して優先的に対策を講じたり、限られたリソースを効率的に配分したりすることが可能となります。
⑥リスクの対策基準と実施内容を決める
分析したリスクに対して、どのような対策を講じるかの基準(対策基準)と、具体的な手順(実施手順)を定めます。
例えば「ウイルス対策ソフトを全PCに導入する」「重要なファイルは定期的にバックアップを取る」といった具体的なルールを決めます。
情報セキュリティポリシーの構成
情報セキュリティポリシーは、組織の情報セキュリティ対策における土台となる重要な文書です。
一般的に、以下の3つの階層で構成されることが多く、それぞれが異なる役割を担っています。
上記のように、抽象的な理念から具体的な手順へと段階的に落とし込むことで、組織全体で統一感のある情報セキュリティ対策を実現できます。
基本方針
「情報セキュリティ基本方針」とも呼ばれ、組織の情報セキュリティに対する基本的な考え方や目的、姿勢を内外に示す最上位の文書です。
なぜ情報セキュリティ対策に取り組むのか、その理念を宣言する役割があります。
対策基準
基本方針で示された理念を実現するための、具体的なルールを定めたものです。
すべての職員が遵守すべき統一的な基準であり、例えば「アクセス管理のルール」や「データの取り扱い基準」などが該当します。
実施手順
対策基準で定められたルールを、実際の業務でどのように実行するのかを具体的に記した手順書やマニュアルです。
担当者が迷わずに作業できるよう、システムごとの操作方法やインシデント発生時の対応フローなどを詳細に記載しましょう。
法人携帯のセキュリティ対策ならMDMを利用しよう!
法人携帯のセキュリティ対策を強化し、私的利用を防ぐためには、MDM(Mobile Device Management)の活用が非常に有効です。
MDMは、複数のスマートフォンやタブレット端末を、管理者が遠隔から一元的に管理・運用できるシステムです。
MDMを導入することで、以下のようなセキュリティ対策が可能になります。
対策内容 | 具体例 |
---|---|
機能制限 | カメラやアプリの利用、テザリングなどを管理者がリモートで制限 |
アプリ管理 | 業務に必要なアプリを一括で配信し、不要なアプリのインストールを禁止 |
セキュリティ設定 | パスワードポリシーの強制、ウイルス対策ソフトの導入 |
紛失・盗難対策 | 遠隔での端末ロックやデータ消去(リモートワイプ) |
これらの機能により、従業員による意図しない情報漏洩や、業務外での端末利用といったリスクを大幅に低減できます。
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まとめ
情報セキュリティポリシーは、サイバー攻撃や情報漏洩といった脅威から企業の重要な情報資産を守るための羅針盤です。
明確なポリシーを策定し、組織全体で共有・実践することで、セキュリティインシデントのリスクを低減し、万が一の事態にも迅速かつ的確に対応できるようになります。
情報セキュリティポリシーの策定は、企業の社会的信頼を維持し、事業を継続していく上で不可欠な取り組みです。
本記事を参考に、自社の状況に合わせた実効性の高いポリシーを策定・運用していきましょう。