社用携帯で休日も電話対応をさせるのは違法?電話対応させる場合の正しい対処法を解説

2025.03.28

業務形態上、営業日以外にもクライアントから社用携帯へ電話がかかってくることは珍しくありません。

しかし社員に休日の電話対応を義務付けると「労働」とみなされ、適切な賃金の支払いが必要となります。

また、対応を強要した場合は労働基準法違反となるリスクもあるため注意が必要です。

本記事では、社用携帯の休日対応に関する法的観点や企業としての正しい対処法、社員に負担をかけない運用方法を解説します。

業務効率を向上させるための具体的な対策についても紹介するので、是非チェックしてくださいね。

休日に社用携帯での電話対応を義務付けると「労働」に当たる

休日に社用携帯での電話対応を社員に義務付けると、法律上「労働」として扱われます。

労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間(以下「労働基準法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。

引用:最高裁判所「労働事件 裁判例集

「使用者の指揮命令下におかれている時間」とは、労働者が会社から指示を受けて労働している時間となります。

明確に指示を出した場合だけでなく、休日対応が暗黙の了解になっている場合も本来は労働時間として扱われる可能性があるため、注意が必要です。

また、社用携帯を持たせて対応を求めると「手待時間」として労働時間に含まれる可能性があります。

応答を義務付ける場合は賃金を支払う必要がある

企業が社員に休日に社用携帯での対応を求める場合、電話対応時間は勤務時間外労働にあたるため適切な手当を支払う必要があります。

以下のように、労働基準法第37条では休日労働に対して通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払わなければならないと定められています。

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

引用:総務省「e-GOV 労働基準法

割増賃金の計算方法:休日労働の割増賃金 = 通常の時給 × 1.25(休日労働)

例えば、時給1,000円の従業員が休日に2時間の電話対応をした場合は、1,000円 × 1.35 × 2時間 = 2,700円の割増賃金が必要となります。

また「休日に社用携帯での電話対応を義務付けると「労働」に当たる」でも紹介した通り、電話に出られる状態を維持することを求めている場合も労働時間に含まれる可能性が高いです。

そのため、手待時間を含めた休日の対応時間全体に対して賃金を支払う必要があるケースもあります。

法律を遵守しながら社用携帯を利用するためにも、休日の電話対応が必要な場合は適切な手当を支給する体制を整えることが重要です。

社員の休息権を尊重しつつ、業務の継続性を確保するバランスを保ちましょう。

休日に社員の社用携帯に電話が!2つの対処法を周知徹底しよう

休日に社用携帯に着信があった場合、以下2つの対応方法が考えられます。

  1. 連絡事項の緊急性を確認させる
  2. メールで折り返し連絡させる

休み中であっても電話対応が避けられない場面もありますが、社員の私的な時間を尊重することも重要です。

そのため、適切な対処法を社内で周知徹底することが不可欠といえます。

①連絡事項の緊急性を確認させる

休暇中に着信という状況では、まずは連絡の緊急性を確認することが重要です。

すべての電話に対応する必要はなく、緊急性の低い案件については翌営業日に対応するよう社内ルールを設けましょう。

例えば、以下のようなケースは「緊急性が高い」と判断されることが多い事例です。

  • 顧客のシステムダウンなど、即時対応が必要なトラブル
  • 取引先の重要な意思決定に関わる案件
  • 対応が遅れると会社の信用問題に発展する可能性がある事案

緊急性の判断基準を明確にしておくことで、社員は対応すべきかどうかの判断がしやすくなります。

社員には「営業時間外のため、緊急でない案件については翌営業日に対応させていただきます」といった回答例を伝えるなど、対応方法を事前に教育しておくと良いでしょう。

緊急性の判断に迷ったら、上司や担当マネージャーに確認するプロセスを設けることも有効です。

②電話ではなくメールでの折り返し連絡を基本とする

電話での応対は即時の対応が求められますが、メール返信なら社員が自分の都合の良いタイミングで対応できるため負担が軽減されます。

「お電話いただきありがとうございます。詳細は次の営業日にご連絡いたします」といった定型文を用意しておくと便利です。

メールでの折り返し連絡を基本ルールとすることで社員は内容を正確に記録として残せるだけでなく、必要に応じて複数の関係者に同時に情報共有することも可能になります。

また、緊急性の高い案件については、まずメールで状況を確認して本当に必要な時のみ電話対応するという段階的な対応方法も有効です。

このように、休日に電話がかかってきたときの対処法を社内で周知徹底することで、社員の休日の権利を守りながらもクライアント満足度を維持できます。

社用携帯の休日対応を義務付けるメリット3つ

休日の社用携帯対応を義務付ける企業側のメリットは、大きく3つあります。

  1. 業務効率化につながる
  2. 顧客満足度やクライアントからの評価が上がりやすい
  3. トラブルを未然に防止できる

これらのメリットについて、具体例を挙げながら詳しく解説します。

①業務効率化につながる

休みの日であっても社用携帯を対応可能な状態にしておくと、業務の連続性が保たれるため効率化につながります。

営業職や顧客対応が重要な職種では、休日でも重要な連絡に対応できることで翌営業日にスムーズな業務再開が可能です。

たとえば、金曜日夕方に顧客から問い合わせがあったとします。

この問い合わせに対して、週末を挟んで月曜日まで回答を待たせるよりも土日のうちに簡単な返信だけでも行うことで、顧客の不安を解消し月曜からの業務をスムーズに進めることが可能です。

また、社用携帯への連絡に対して休日も対応を義務付けることで、急な連絡や重要情報を迅速に共有することも可能なため社員が柔軟に対応できます。

特に複数部門が関わるプロジェクトでは、休日でも必要な情報共有ができ業務の遅延を防ぐことができ、生産性向上に繋がりますよ。

②顧客満足度やクライアントからの評価が上がりやすい

顧客は自分の問題や疑問が素早く解決されることに高い価値を感じるため、休日対応は顧客との信頼関係構築に直結します。

特に緊急性の高い案件や重要な顧客からの問い合わせに迅速に対応できれば「休日なのに対応してくれた」という好印象を与えられます。

他にも、競合他社が休日対応していないとすると、自社だけが対応することで明確な差別化が可能です。

顧客からの評価向上は長期的な取引関係の維持・拡大につながる重要な要素のため、迅速に対応するよう心がけましょう。

③トラブルを未然に防止できる

休みの日の電話対応を責務とすると、緊急時のトラブルに素早く対応できるようになります。

システム障害や製品トラブル、自然災害などの緊急事態が発生した時には、被害拡大を防ぐためにも初期対応の速さが重要です。

特に緊急性の高い問題は「休日だから」と対応を先延ばしにすると、重大なトラブルに発展するリスクがあります。

一例をあげると、セキュリティ関連の問題が発生した場合には、早期対応を行わなければ後に情報漏洩やサイバー攻撃などの原因となりうるでしょう。

また、休日中に発生した問題に迅速に対応しておくことで、翌営業日からの業務への影響を最小限に抑えられます。

平日の業務効率を維持し会社全体の生産性を向上できるため、人件費削減にもつながるでしょう。

社用携帯の休日対応を義務付けるデメリット3つ

社用携帯への着信に対する休暇中の応答は、業務効率化や顧客満足度向上などのメリットがある一方で企業側が考慮すべき重要なデメリットも存在します。

  1. コストがかかる
  2. 社員が不満を持つ可能性がある
  3. 社員が社用携帯を私的利用する恐れがある

ここでは、この3つのデメリットを挙げ、具体的に解説します。

①コストがかかる

社用携帯の休日稼働は、人件費が発生します。

応答を義務付ける場合は賃金を支払う必要がある」でも解説した通り、休日の電話対応は労働基準法上「労働」とみなされるため、法律に基づいた割増賃金の支払いが必要です。

休日労働には、通常の賃金に対して25%以上の割増率が適用されます。

もしも社員全員が休日対応する場合、人件費は企業全体で大きな負担になります。

また、社用携帯自体の導入・運用コストも考慮すべきです。

社用携帯は、端末代金や通信料、セキュリティ対策費などのランニングコストがかかります。

紛失や故障時の追加費用も発生する可能性があり、特に中小企業にとっては大きな経済的負担となりうるでしょう。

②社員が不満を持つ可能性がある

営業時間外の電話への応対が務めとなってしまうと、社員のワークライフバランスが崩れてしまい不満が高まる可能性があります。

休日は仕事から解放される時間であるため、電話応対の義務は社員の休む権利を侵害することになります。

十分な休息が取れないことで社員は精神的ストレスを抱えたり、体調を崩したりしてしまうこともあるでしょう。

この状態が継続することで社員のモチベーションや生産性の低下を招き、最終的には優秀な人材の離職につながる恐れもあります。

近年は働き方改革やワークライフバランスの重要性が高まっており、休日の業務連絡に対する社員の抵抗感は以前より強くなっています。

休日の連絡対応を義務付ける場合は事前に対処方法や対応時間を定めておき、社員が十分な休息を取れるよう工夫することが重要です。

③社員が社用携帯を私的利用する恐れがある

社用携帯を休日に持ち帰らせるとオンとオフの境界が曖昧になり、私的利用のリスクが高まります。

社用携帯の私的利用は、通信コストの増大につながるため十分な取り締まりが重要です。

社員がSNSや動画視聴、個人的な連絡に社用携帯を使用するとデータ通信料や通話料が増加し、企業の経費を圧迫してしまいます。

また、個人的なアプリのインストールやウェブサイト閲覧によるウイルス感染や、それに起因する情報漏洩も考えられます。

加えて、個人的な利用中に機密情報を誤送信してしまうリスクも考えられるため、私的利用の防止を目的とした社内ルールの策定など、事前に対策を行うことが重要です。

社員に社用携帯で休日に対応をさせないための対策方法4つ

休暇中に社員が社用携帯を利用することは、企業にとって悩ましい問題です。

社員の個人的な時間を尊重しながらも業務の継続性を確保するためには適切な対策を講じる必要があります。

  1. 社用携帯に関するルールを定める
  2. 急用以外はメールを使用させる
  3. 社用携帯を持ち帰らせない
  4. 業務効率を上げて休日の連絡が不要な状態を作る

ここでは、具体的な解決策となる4項目を詳しく解説します。

①社用携帯に関するルールを定める

社用携帯の利用について明確な社内ルールを設置することで、休日に社用携帯に対応することで生じうる懸念点を解決することが可能です。

はっきりとルールを策定することで、社員はプライベートを守りながらも、必要不可欠なケースには適切な対応をとれるようになります。

第一に「休日は社用携帯の電源をオフにする」「留守番電話に設定する」などの基本的な対応方針を決めておきましょう。

また、電源をオフにする際は上司や関係者へ事前に連絡するよう周知しておくと良いでしょう。

対応可否が明確化されるため「○○さんから××さんに対応してもらえると聞いたのに、結局対応してもらえなかった」といったクライアントからの不満を防止できます。

次に、休日対応に対する手当についても明確に定めることが重要です。

休みの日に対応した時の残業代や休日手当の支給条件、金額などを就業規則に明記しておくことで社員の不満を防ぎ、適切な労務管理ができます。

なお、ルールを策定した際には必ず全社員に周知させることが重要です。

社内研修やマニュアルの配布を通じて「就業時間外に電話に出る義務はないこと」「会社の指揮命令下にない場合は賃金発生の対象外であること」を正確に伝えることが大切です。

【関連記事】
社用携帯の利用ルールに必要な項目5選!ルール策定のメリット・デメリットやポイントも解説

②急用以外はメールを使用させる

電話ではなくメールでの折り返し連絡を基本とする」でも紹介したとおり、緊急性の低い連絡は電話ではなくメールでのやり取りを推奨しましょう。

メールを効果的に活用することで、社員が自分の都合の良いタイミングで確認・対応することが可能です。

そのため、休む時間を確保しながらも、業務連絡に対応してもらうことができます。

また、クライアントや取引先に対しても「緊急時以外はメールでご連絡ください」と事前に伝えておくのが効果的です。

同時に緊急時の連絡方法も明確に通知しておけば、クライアント側も安心して業務を進められます。

③社用携帯を持ち帰らせない

最も効果的な対策の一つは社用携帯を会社に置いて帰宅するルールを設けることです。

社用携帯は出社時に貸与し退社時に置いてから帰るなどのルールを定めておくことで、会社の指揮命令下にないことが明確になります。

また、社用携帯が手元にないと、社員は休暇中に仕事の連絡を気にすることなくリフレッシュする時間を確保でき、メンタルヘルスの維持や生産性の向上にもつながります。

ただし、営業職などの外回りが多い職種や緊急対応が必要な業種では、完全に持ち帰らせないことが難しい場合もあるでしょう。

そのような場合には、交代制で当番を決めるなど特定の社員に負担が集中しないような工夫が必要です。

④業務効率を上げて休日の連絡が不要な状態を作る

根本的な解決策として、そもそも休日の連絡が必要ない体制づくりを目指しましょう。

業務効率を上げるには、まずは業務の洗い出しから始めてください。

無駄な作業や工程を見直し、平日内に業務を完結できる仕組みを整えることが大切です。

同時に、会議や資料作成の必要性も再検討して効率化できる部分を見つけましょう。

また、クラウドツールやビジネスチャットを活用すれば必要な情報にいつでもアクセスできるので、休暇中の確認連絡が減ります。

業務の属人化を防いで複数の社員が同じ業務に対応できる体制を作ることで、特定の社員が休んでいても業務が滞らない環境が実現できますよ。

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まとめ

社用携帯の休日対応は、労働基準法違反となる可能性があります。

業務時間外の電話対応は「労働」と見なされるため、適切な賃金の支払いが必要です。

また、休日対応には業務効率化や顧客満足度向上などのメリットがある一方で、コスト増加や社員の不満、私的利用リスクなどのデメリットも存在します。

明確なルール策定やメール活用の推奨、社用携帯の社内保管、業務効率化による時間外の連絡の削減などの対策を行うことで、トラブルを回避しながら休日の対応を社員にお願いすることができます。

なお、docomo、au、ソフトバンク、楽天モバイルの正規代理店である法人携帯ファーストは、通信コスト削減、複数端末の一元管理など企業ニーズに応える提案が可能です。

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