BYOD導入のメリット・デメリットとリスク対策を徹底解説
2025.10.30
近年、働き方の多様化に伴い「BYOD(Bring Your Own Device)」という働き方が注目されています。
BYODは使い慣れた携帯端末で業務効率を高め、柔軟な働き方やコスト削減を実現することがメリットです。
本記事では、BYODの意味や背景、メリット・デメリット、導入時のセキュリティ対策、実際の導入事例、さらに法人携帯との比較まで幅広く解説します。
自社に適した携帯電話の使い方を検討するための参考にしてください。
目次
BYODとは?
近年テレワーク等の普及に伴い「BYOD」(ビーワイオーディー)という言葉を耳にする機会が増えています。
これは、従業員が自分の私用携帯端末を業務に活用する働き方のことを指します。
BYODは、スマートフォンやノートPCの普及、テレワークの浸透、クラウドサービスの進化により、私物端末を業務に活用する事が広まりました。
現在では、端末支給のコスト削減や、従業員の働きやすさ向上といったメリットから、多くの企業が導入を検討しています。
CYODとの違い
CYOD(Choose Your Own Device)は「企業が選定した端末の中から従業員が選ぶ」方式です。
私物端末を自由に使うBYODに比べて、 セキュリティや管理の面で企業側の統制が取りやすいのが特徴と言えるでしょう。
その一方で、従業員の自由度はBYODより制限される傾向があります。
| BYOD | CYOD | |
|---|---|---|
| 所有者 | 従業員 | 企業 |
| 初期費用 | 従業員負担 | 企業負担 |
| 月額費用 | 従業員負担(または一部企業負担) | 企業負担 |
| セキュリティ管理 | 難易度が高い | 企業側で統制しやすい |
| 利便性 | 従業員にとって使い慣れた端末 | 企業側で業務適性のある端末が用意できる |
BYODは柔軟性が高い一方で、セキュリティ面での管理が課題になりやすいという違いがあります。
BYODが注目される背景と導入が進む理由3つ
BYODが注目される背景と導入が進む理由には、以下3つの理由があります。
①テレワークやリモートワークの普及
BYODが注目される大きな理由の1つに、テレワークやリモートワークといった新しい働き方の普及が挙げられます。
近年では、新型コロナウイルスの影響もあり、多くの企業で在宅勤務が導入された一方で、急な移行だったため、全従業員に業務用端末を貸与する準備が間に合わなかった企業も少なくありません。
そこで、従業員が所有する個人のPCやスマートフォンを業務に活用するBYODが、代替手段として注目を集めたのです。
実際に、テレワークの普及に伴い、BYODの導入を検討または実施する企業は増加傾向にあります。
- 従業員は使い慣れた端末で自宅から業務ができる
- 企業は端末購入のコストや管理の手間を削減できる
上記のように、BYODはテレワーク環境下において、企業と従業員の双方にメリットをもたらす選択肢として認識されるようになりました。
出社と在宅を組み合わせたハイブリッドワークが定着しつつある現代において、場所を選ばずに業務を行えるBYODの重要性は、今後さらに高まっていくでしょう。
②企業のITコスト削減ニーズ
企業がBYODを導入する大きな理由の1つに、ITコストの削減が挙げられます。
従来、企業が従業員に業務用のデバイスを支給する場合、以下のようなコストが発生していました。
| 費用項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 端末購入費 | パソコン、スマートフォン、タブレットなどの購入費用 |
| 通信費 | 毎月の基本料金やデータ通信量にかかる費用 |
| 維持・管理費 | 故障時の修理費用、OSやソフトウェアのアップデート管理費用 |
従業員数が多い企業ほど、上記のコストは膨大な金額になります。
しかし、BYODを導入すれば、従業員が私物の端末を利用するため、企業は新たに端末を購入する必要がありません。
また、通信費に関しても、全額または一部を従業員負担とするケースが多く、企業の支出を大幅に抑制できます。
このように、BYODは企業のIT関連コストを削減したいというニーズに応える有効な手段として注目されています。
③働き方改革による柔軟な勤務スタイルへの対応
働き方改革の推進により、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方が求められるようになったことも、BYODが注目される大きな理由です。
かつてはオフィスでの業務が当たり前でしたが、現在では育児や介護といったライフステージの変化に対応しながら働き続けることが重要視されています。
BYODを導入すれば、従業員は自宅や外出先など、オフィス以外の場所でも業務を進められます。
例えば、以下のような働き方が可能です。
- 通勤時間を削減し、育児や介護に時間を充てる
- 出張先や移動中にメール確認や資料作成を行う
- 災害時でも事業を継続する(BCP対策)
上記のように、BYODは従業員の多様なニーズに応え、ワークライフバランスの向上に貢献します。
企業はBYODとクラウドサービスなどを組み合わせることで、従業員が能力を最大限に発揮できる環境を整えられるのです。
BYODによる会社のメリット4つ
BYODの導入には以下のようなメリットがあります。
各メリットを詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
①コスト削減の効果がある
BYODを導入することで、企業は業務用端末の購入や管理にかかるコストを大幅に削減できます。
従業員が私物のスマートフォンやPCを業務に利用することで、企業としては端末の支給や通信契約にかかる費用を削減できるでしょう。
特に従業員数の多い企業では、そのコストメリットがより顕著に表れます。
②働き方の柔軟性が向上できる
BYODを導入することで、従業員は自分の使い慣れた端末を利用して、時間や場所にとらわれずに業務を行えるようになります。
これにより、在宅勤務や外出先での業務対応がしやすく柔軟な働き方が実現し、急な対応や業務連絡にも迅速に応じられるため、仕事のスピードや質も向上しやすくなるでしょう。
働き方改革やテレワーク推進の流れにも適応できる点が、企業にとって大きなメリットと言えます。
③生産性の向上につながる
BYODにより業務用端末の操作習熟や初期設定の手間が省けるため、スムーズに業務を開始できます。
こうした環境は、従業員の集中力や作業スピードを高めるため、生産性の向上にも効果的です。
また、端末の操作に慣れていることでミスが減り、結果として作業時間の短縮にもつながるでしょう。
さらに、柔軟な働き方が可能になることで、集中しやすい環境や時間を選べるようになり、業務効率がさらに高まります。
➃従業員満足度の向上につながる
BYODを導入することで、従業員は自分の使い慣れた端末で業務を行えるため、ストレスが軽減され作業効率が向上します。
業務端末と私用端末を分ける必要がないことで、荷物が減るなど日常の利便性も高まります。
こうした働きやすさの向上は、従業員の満足度や定着率の向上にもつながるでしょう。
BYODによる会社のデメリットとリスク3つ
BYODの導入を検討する際は、デメリットもしっかりと理解したうえで判断することが重要です。
主に3つのデメリットを詳しく解説していきます。
①セキュリティリスクが増える
BYODの導入によって、業務データが個人所有の端末に保存されるようになるため、情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まります。
企業のセキュリティポリシーが徹底されていない場合、端末の紛失や盗難、ウイルス感染によって重要な情報が外部に流出する可能性もあるでしょう。
特に社外ネットワークを利用する機会が増えるため、通信の暗号化やアクセス管理などの対策が不可欠です。
➁シャドーITの完全な防止はできない
BYODでは従業員が自由にアプリやクラウドサービスをインストール・利用できるため、IT部門が把握できない“シャドーIT”の発生リスクが高まります。
シャドーITとは:企業が管理・把握していない私物端末やクラウドサービスを、従業員が業務に無断で使用することを指す
シャドーITにより、企業のセキュリティ基準に準拠しないツールが業務で使われる可能性があり、情報漏えいやシステムトラブルの原因になることもあります。
社内ルールやガイドラインを整備しても、すべての利用を完全に把握・制御するのは困難です。
③通信費の会計が複雑化する
BYODでは従業員が私用端末を業務に使用するため、通信費やデータ使用料のうち、どこまでが業務利用なのかを正確に区別するのが難しくなります。
その結果、企業側が通信費をどのように負担・精算するかのルールづくりが複雑化し、経理処理や従業員との調整に手間がかかる場合があるでしょう。
特に業務と私用の利用が混在するケースでは、費用配分の明確化が課題となります。
プライベート利用と業務利用が混在すると、「どこまでが会社負担?」という問題が出てきます。
特に精算ルールが曖昧だと、従業員の不満や経理トラブルにつながることも。
BYODによる従業員側のメリット5つ
BYODは、従業員にとっても多くのメリットがあります。主に以下の5つの点が挙げられます。
①使い慣れた端末で業務ができる
BYODを導入する従業員側の最大のメリットは、普段から使い慣れている個人所有の端末で業務を行えることです。
企業から貸与される業務用端末の場合、機種やOSが異なると操作に慣れるまで時間がかかり、本来のパフォーマンスを発揮できないことがあります。
特に、プライベートではiPhoneを使っているのに業務用端末がAndroidであったり、その逆のケースも少なくありません。
その点、BYODであれば、従業員は自身が最も使いやすいと感じる端末を自由に選んで業務に活用できます。
操作方法を新たに覚える必要がなく、設定やアプリケーションのカスタマイズも自分好みにできるため、ストレスなくスムーズに業務へ取り組むことが可能です。
②業務とプライベートの両立がしやすい
BYODの大きなメリットは、業務とプライベートの両立がしやすくなる点です。プライベートで使い慣れた端末をそのまま業務でも利用できるため、複数のデバイスを持ち運ぶ必要がなくなります。
| 詳細 | |
|---|---|
| 荷物の軽減 | 端末を2台持ち歩く必要がなくなる |
| 連絡の集約 | 業務連絡もプライベートの連絡も1つの端末で確認できる |
| シームレスな移行 | 仕事の合間にプライベートの用事を済ませたり、プライベートの時間に急な業務対応をしたり柔軟な切り替えが可能 |
上記のように、BYODは物理的な負担を減らすだけでなく、仕事と私生活の境界線をよりスムーズにし、従業員のワークライフバランス向上に貢献します。
結果として、従業員の満足度やエンゲージメントが高まり、企業全体の生産性向上にも繋がるでしょう。
③場所を問わず柔軟に働ける
BYOD(Bring Your Own Device)を導入すると、従業員はオフィス以外の場所でも、自分のデバイスを使って業務を進めることが可能になります。
例えば、以下のような場面でBYODは役立ちます。
| 活用シーン | 具体例 |
|---|---|
| 外出・出張時 | 移動中の電車内やカフェで、急なメール対応や資料確認ができる |
| 在宅勤務時 | 自宅の慣れた環境で、集中して業務に取り組める |
| 緊急時 | 災害時など、出社が困難な状況でも業務を継続できる |
BYODにすることで、通勤時間を削減したり、育児や介護と仕事を両立させたりと、個々のライフスタイルに合わせた働き方が実現しやすくなるでしょう。
④新しいデバイスに早く対応できる
BYODでは従業員自身が最新の機種や好みのデバイスを選択できるため、新しいテクノロジーへ迅速に対応できる点がメリットです。
企業が全従業員に業務用端末を貸与する場合、最新機種が発売されるたびに買い替えるのはコスト面で現実的ではありません。
その点、BYODであれば、従業員が個人的に購入した最新デバイスをそのまま業務に活用できます。
新しいデバイスに早く対応できることで、例えば以下のようなメリットが考えられます。
| メリット | 具体例 |
|---|---|
| 最新機能の活用 | 最新OSや高性能なカメラ機能などをいち早く業務に取り入れ、生産性向上につなげられる |
| ITリテラシーの向上 | 新しいデバイスや技術に触れる機会が増え、従業員全体のITスキルが向上する |
| 業務効率化 | 処理速度の速い最新機種を使うことで、アプリの起動やデータ処理がスムーズになり、待ち時間を短縮できる |
上記のように、従業員が自らの意思でデバイスをアップグレードできる環境は、個人の生産性向上だけでなく、組織全体のIT対応力を高める効果も期待できるでしょう。
⑤仕事と私生活の利便性が向上する
従来は、業務用の携帯電話とプライベート用のスマートフォンを2台持ち歩くのが一般的でした。
しかし、BYODを導入すれば、1台の端末で両方の役割をこなせるようになります。
| 従来 | BYOD導入後 | |
|---|---|---|
| 持ち歩く端末 | 業務用・私用の2台 | 1台に集約 |
| 連絡先の管理 | 2台の端末で別々に管理 | 1台の端末で一元管理 |
| 充電の手間 | 2台分の充電が必要 | 1台分で済む |
| 紛失リスク | 2台分の紛失リスク | 1台分に軽減 |
上記のように、端末が1台に集約されることで、持ち運びの手間や充電の煩わしさ、紛失のリスクが軽減されます。
また、連絡先も一元管理できるため、業務上の連絡とプライベートの連絡をスムーズに切り替えることが可能です。
こうした利便性の向上は、従業員のストレス軽減にもつながり、結果として仕事のパフォーマンス向上にも貢献するでしょう。
BYODによる従業員側のデメリット5つ
BYODによる従業員側のデメリットは、主に5つあります。
以下から詳しく紹介していくので、ぜひ参考にしてください。
①プライバシーが会社に監視される懸念がある
BYODを導入するにあたり、会社側はセキュリティ対策として、MDM(モバイルデバイス管理)などのツールを導入することが一般的です。
しかし、MDMを導入することで、従業員の私物端末を管理下に置くことになり、従業員のプライバシーを侵害する可能性があります。
従業員からすれば「どこまで見られているのかわからない」という不安や不信感が生まれ、会社との信頼関係に影響を及ぼすこともあるでしょう。
従業員の個人携帯に会社がMDMを導入する場合、把握できる情報は以下のとおりです。
| 監視される可能性のある情報 | 具体例 |
|---|---|
| 位置情報 | 従業員がどこにいるのかを常に把握される |
| アプリの利用履歴 | どのようなアプリを、いつ、どれくらい使っているか |
| Webサイトの閲覧履歴 | プライベートでどのようなサイトを見ているか |
| 端末内のデータ | 個人の写真や連絡先、メッセージなど |
もちろん、多くのMDMツールでは、業務データとプライベートなデータを分けて管理する機能や、監視範囲を限定する設定が可能です。
会社側はプライバシーに配慮した運用ルールを明確に定め、従業員に丁寧に説明し、理解を得るようにしましょう。
②業務アプリのインストールによる端末容量の圧迫
BYODでは、私物のスマートフォンやPCに業務用アプリをインストールする必要がありますが、端末のストレージ容量が圧迫される点がデメリットです。
特に、写真や動画、プライベート用のアプリを多く保存している従業員にとっては、業務アプリのインストールが大きな負担となる可能性があります。
| 業務で利用するアプリの例 | 想定される容量 |
|---|---|
| コミュニケーションツール | 100MB~500MB |
| クラウドストレージ | 50MB~300MB |
| セキュリティソフト | 100MB~1GB |
| Web会議システム | 100MB~500MB |
上記はあくまで一例ですが、複数のアプリをインストールすると、数GB単位で容量を消費することも珍しくありません。
容量不足に陥ると、端末の動作が遅くなったり、プライベートなデータの保存ができなくなったりする可能性があります。
また、OSのアップデートができなくなり、セキュリティ上の脆弱性が放置されるリスクも考えられます。
従業員は、業務のためにプライベートなデータを削除したり、より容量の大きい端末に買い替えたりする必要に迫られるかもしれません。
これは従業員にとって大きなストレスとなり、BYODへの不満につながる可能性があります。
そのため企業側は、こうした従業員の負担を理解し、必要最小限のアプリに絞る、代替手段を検討するなどの配慮が求められます。
③紛失・盗難時の責任やトラブルのリスク
BYODはプライベートと仕事を1台の端末で管理できるため、管理が楽になるというメリットがありますが、端末を紛失したり盗難にあったりと、責任問題に発展するリスクがあります。
法人携帯であれば、紛失時の対応マニュアルが整備され、責任の所在も会社側にあることが明確です。
しかし、BYODでは個人所有の端末であるため、紛失・盗難時の責任が従業員個人に重くのしかかる可能性があります。
具体的には、以下のようなトラブルが想定されます。
| トラブルの種類 | 想定される内容 |
|---|---|
| 情報漏洩 | 端末内に保存された顧客情報や機密情報が外部に流出する |
| 損害賠償 | 情報漏洩によって会社や取引先に損害を与えた場合、賠償責任を問われる可能性がある |
| 端末の弁償 | 会社によっては、業務利用していた端末の弁償を求められるケースがある |
こうしたリスクを回避するためには、BYOD導入前に、紛失・盗難時の対応フローや責任の範囲を会社と従業員の間で明確に定めておくことが不可欠です。
④通信費や端末利用料を一部自己負担する可能性
BYODでは、個人所有の端末を業務に利用するため、通信費や端末の購入・維持費用の一部を従業員が負担する可能性があります。
会社がどこまで費用を負担するかは、事前に定められたルールによって異なります。
費用の負担割合は、主に以下の3パターンです。
| 費用負担のパターン | 内容 |
|---|---|
| 会社が全額負担 | 通信費や端末購入費などを会社がすべて負担します。従業員の負担はありませんが、会社のコストは増加します。 |
| 一部を会社が負担 | 「月額〇〇円まで」のように、会社が一定額を補助します。超過分は従業員の自己負担となります。 |
| 従業員が全額負担 | 従業員がすべての費用を負担します。会社のコストは抑えられますが、従業員の不満につながる可能性があります。 |
どのパターンを採用するかは、企業の考え方や従業員との合意によって決まります。
費用負担に関するルールが曖昧だと、後々のトラブルに発展しかねません。
BYODを導入する際は、費用負担の範囲を明確にし、従業員に十分な説明を行うことが重要です。
⑤業務と私用の切り替えが難しくなる
BYODでは、1台の端末で業務とプライベートの両方を行うため、オンオフの切り替えが難しくなるというデメリットがあります。
結果として、ワークライフバランスが崩れ、ストレスや疲労の蓄積につながる恐れもあるでしょう。
| 状況 | 従業員への影響 |
|---|---|
| 休日・深夜の通知 | 十分な休息が取れず、プライベートの時間が侵害される |
| 常に仕事の連絡が気になる | 精神的なプレッシャーとなり、ストレスが増大する |
| プライベート利用中の業務連絡 | 家族や友人との時間に集中できなくなる |
上記のように、BYODは利便性が高い一方で、仕事と私生活の境界線を曖昧にしてしまうリスクをはらんでいます。
従業員が心身ともに健康に働くためには、企業側がBYODの利用に関するルールを明確にし、時間外の業務連絡を控えるなどの配慮が不可欠です。
BYOD導入が向いている企業
BYODが向いている企業は主に以下の5つです。
- テレワークやリモートワークを積極的に導入している企業
- ITリテラシーが高い従業員が多い企業
- 業務に必要なアプリやシステムがクラウド化されている企業
- 社員の働き方の自由度を重視している企業
- 業務情報のセキュリティポリシーが明確に整備されている企業
①テレワークやリモートワークを積極的に導入している企業
テレワークやリモートワークを積極的に導入している企業は、BYODの導入に向いています。
オフィスに出社しない従業員が増える中で、BYODは個人のスマートフォンやPCを活用して円滑なコミュニケーションを可能にするため、非常に有効な手段となります。
近年では、働き方改革の推進により、テレワークや在宅勤務、フリーアドレスといった、時間や場所に縛られない働き方が増えました。
例えば、大分県庁ではリモートワーク導入に伴いBYODを導入した結果、想定以上の希望者が集まり、働き方の多様化や業務効率化が促進されています。
また、自動車部品メーカーのデンソーでも、テレワーク時のコミュニケーション手段としてBYODを導入し、残業時間の削減や働き方の多様化を実現しています。
このように、テレワークを推進する企業にとって、BYODは従業員の利便性を高め、生産性を向上させるための重要な選択肢となるでしょう。
②ITリテラシーが高い従業員が多い企業
BYODでは、従業員が自身でデバイスのセキュリティ設定やアプリの管理を行う必要があり、一定のITリテラシーが求められます。
ITリテラシーが高い従業員が多い企業では、以下のようなメリットが期待できます。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| セキュリティリスクの低減 | 従業員が自らセキュリティ対策を講じることができるため、情報漏洩のリスクを低減できます。 |
| スムーズな導入 | 新しいツールやシステムの導入がスムーズに進み、業務効率の向上が期待できます。 |
| サポートコストの削減 | 従業員自身でトラブルシューティングを行えるため、IT部門のサポートコストを削減できます。 |
もし、社内のITリテラシーに不安がある場合は、導入前に研修を実施するなど、従業員のスキルアップを支援する体制を整えることが重要です。
③業務に必要なアプリやシステムがクラウド化されている企業
業務で利用するアプリケーションやシステムが、すでにクラウド化されている企業はBYODの導入に向いています。
クラウドサービスは、インターネット環境があれば個人の端末からでも安全にアクセスできるため、BYODとの親和性が非常に高いからです。
例えば、以下のようなクラウドサービスは、多くの企業で利用されています。
| サービスの種類 | 具体例 |
|---|---|
| コミュニケーション | Slack, Microsoft Teams |
| Web会議 | Zoom, Google Meet |
| ファイル共有・管理 | Google Drive, Dropbox, OneDrive |
| プロジェクト管理 | Asana, Trello, Backlog |
これらのツールは、端末自体にデータを保存せずに業務を行えるため、情報漏洩のリスクを低減できます。
逆に、社内サーバーにアクセスしないと利用できないオンプレミス型のシステムが業務の中心である場合、BYODの導入は困難です。
まずは、業務で使うツールをクラウドサービスへ移行することから検討しましょう。
④社員の働き方の自由度を重視している企業
近年、テレワークやフレックスタイム制のように、従業員のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を導入する企業が増えています。
育児や介護などの事情で、毎日オフィスに出社することが難しい従業員も少なくありません。
BYODを導入すれば、従業員は使い慣れた私物のデバイスを使って、場所や時間に縛られずに業務を進めることができます。
| 働き方の例 | BYODによるメリット |
|---|---|
| テレワーク | 自宅など、オフィス以外の場所でも業務が可能 |
| 時短勤務 | 限られた時間内で効率的に業務を遂行できる |
| フレックスタイム | コアタイム以外の時間を有効活用できる |
上記のように、BYODは従業員の多様な働き方をサポートし、ワークライフバランスの向上に貢献します。
結果として、優秀な人材の離職を防ぎ、従業員満足度の向上にもつながるでしょう。
⑤業務情報のセキュリティポリシーが明確に整備されている企業
全社的な管理体制の構築から従業員一人ひとりへの教育、そして定期的な監査まで、包括的なセキュリティポリシーが整備されている企業は、BYOD導入のリスクを適切に管理できるため、導入に向いていると言えるでしょう。
BYODは従業員の私物端末を利用するため、情報漏えいや不正アクセスといったセキュリティリスクが常に伴います。
そのため、BYODの導入を成功させるには、明確なセキュリティポリシーの策定と整備が不可欠です。
例えば、大手通信キャリアであるKDDI株式会社では、情報セキュリティに関する基本方針として以下のような項目を定めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 情報セキュリティ管理体制 | 経営層を含めた全社的な管理体制を構築し、リスク分析と対策を迅速に実施する |
| 情報セキュリティ対策 | 不正アクセス、情報漏えい等を防ぐため、物理的、技術的、人的な対策を講じる |
| 社内規定の整備 | ポリシーに基づいた明確なルールを社内に周知徹底する |
| 教育・監査 | 全従業員への継続的な教育と、定期的な内部監査を実施する |
上記のように、明確なルールを定めて全社で遵守する体制を構築できる企業であれば、BYODのメリットを最大限に活かせます。
BYOD導入にあたってのセキュリティ対策
BYODを導入する際は、セキュリティリスクへの十分な対策が不可欠です。
個人端末を業務に使用することで情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まるため、企業は明確なルールと技術的な対策を組み合わせて運用する必要があります。
以下に、主な3つの対策を紹介します。
社内ガイドルールの策定
まず重要なのは、BYOD運用に関するガイドラインを明文化し、全従業員に周知することです。
- 使用可能な端末の条件
- 業務利用の範囲
- データ保存・共有
上記のルール等を明確に定めておくことで、トラブルの予防につながります。
また、ガイドラインは定期的に見直し、時代に合わせた更新が必要です。
MDMの導入
MDM(モバイルデバイス管理)とは、企業が従業員の端末を遠隔で管理できる仕組みです。
位置情報の把握やリモートロック、業務アプリのインストール制御などが可能となり、万が一端末を紛失した場合でも、情報漏えいを防ぐ手段として有効です。
BYOD環境では、こうした技術的な管理の導入がセキュリティ強化の鍵となります。
従業員にセキュリティリスクの教育を行う
どれだけシステム面で対策を講じても、最終的には利用する従業員の意識が重要です。
フィッシング詐欺や不審なアプリのインストールといったリスクを理解してもらうために、定期的なセキュリティ教育を行いましょう。
実例を交えた研修やeラーニングなどを活用することで、従業員のリテラシー向上が期待できます。
BYODの導入事例
BYODは多くの企業で活用が進んでいます。具体的にどのように導入され、どんな効果があったのか見てみましょう。
NTTデータ
NTTデータは、従業員の働き方改革の一環としてBYODを導入しました。
自分の端末を業務に活用することで、柔軟な勤務環境を実現し、生産性の向上を目指しています。
導入後は、従業員のモバイル活用が進み、リモートワークの促進や業務効率化に成功しました。
大分県庁
大分県庁は、行政サービスの効率化と職員の働きやすさ向上を目的にBYODを導入しました。
特に現場職員のスマートフォン活用を推進し、外出先でもスムーズに業務ができる環境を整備。
結果として、業務の迅速化と職員の満足度向上につながっています。
アイ・ティ・フロンティア
IT企業であるアイ・ティ・フロンティアは、社員の多様な働き方を支援するためにBYODを導入しました。
自社のITリソースを活用し、セキュリティ管理を強化しながら個人端末の業務利用を推進しています。
導入によって、柔軟な働き方が可能になり、離職率の低下や業務効率の改善が見られています。
法人携帯とBYODはどちらがおすすめ?
法人携帯とBYODにはそれぞれ異なるメリット・デメリットがあります。
導入目的や運用体制に応じて適した選択が必要です。
以下の表で両者を比較します。
| BYOD | CYOD | |
|---|---|---|
| 初期費用 | 企業が端末を購入・管理するため高め | 従業員の端末を使用するため低コスト |
| 月額費用 | 企業が一括で負担 | 従業員が通信費の一部または全部を負担する場合あり |
| セキュリティ管理 | 企業が一元管理でき、強固な対策が可能 | 個人端末のため管理が難しくリスクが増す |
| 端末の使いやすさ | 支給された端末を使用 | 自分の慣れた端末を使えるため使いやすい |
| 導入・運用の手間 | 導入・管理コストや運用負担が比較的高い | 管理は難しいが、導入は手軽 |
| 柔軟な働き方 | 支給端末に依存し柔軟性は限定的 | 個人端末なので在宅や外出先での利用がしやすい |
| 法的・規則対応 | 法人契約で安心。契約内容の調整がしやすい | 個人端末のため情報管理に注意が必要 |
セキュリティや企業の一元管理を重視する場合は法人携帯がおすすめです。一方、コスト削減や働き方の柔軟性を優先するならBYODが適しています。
企業の状況や目的に応じて最適な選択を検討しましょう。
セキュリティ面や管理のしやすさなら、やっぱり法人携帯が安心。企業が一括で管理してくれるから安全面での負担が軽減されます!
BYODを成功させるための導入ステップ
BYODを成功させるための導入は、主に以下の4ステップで行います。
上記について、以下から詳しく紹介していくので参考にしてください。
①事前に目的と範囲を明確化する
BYODを成功させるためには、導入の目的と適用範囲を事前に明確にすることが重要です。
何のためにBYODを導入するのか、目的が曖昧なままでは導入自体がゴールになってしまい、効果的な運用は期待できません。
例えば「コスト削減」や「生産性向上」など、具体的な目的を定めましょう。
また、どの従業員に、どのデバイスで、どの業務までを許可するのか、適用範囲を具体的に決める必要もあります。
全社一律で導入するのか、特定の部署や役職に限定するのかによって、準備すべきことや管理方法が大きく変わるためです。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 対象者 | 全従業員、営業部のみ、役職者のみ など |
| 対象デバイス | スマートフォン、タブレット、ノートPC など |
| 許可する業務 | メールの確認、スケジュール管理、資料閲覧、社内システムへのアクセス など |
目的と範囲を明確にすることで、必要なセキュリティ対策やルール策定の方向性が定まり、スムーズな導入と運用につながります。
②セキュリティポリシーの策定と周知
BYODの導入を成功させるためには、明確なセキュリティポリシー(ルール)を策定し、従業員に周知徹底することが不可欠です。
個人所有の端末を業務で利用するため、情報漏洩などのリスクを未然に防ぐためのルール作りが重要になります。
ポリシーには、以下のような内容を盛り込みましょう。
- 利用方針
- 利用端末の基準
- 利用ルール
- セキュリティ対策内容
特に、従業員のプライバシーと会社のセキュリティを両立させる観点から、会社が端末をどこまで管理するのかを明確にすることが重要です。
③デバイス管理体制の構築
BYODを成功させるためには、従業員が利用する多様な個人端末を一元的に管理し、セキュリティを確保する体制の構築が不可欠です。
IT部門が各端末の状況を把握し、迅速に対応できる仕組みを整えましょう。
具体的には、MDM(モバイルデバイス管理)やMAM(モバイルアプリケーション管理)といったツールの導入が効果的です。
2つのツールを活用することで、以下のような管理が可能になります。
| 管理項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| セキュリティ設定の一括適用 | パスワードポリシーの強制、画面ロック、データの暗号化など |
| アプリの管理 | 業務に必要なアプリの配布、不要なアプリの利用制限 |
| リモートワイプ | 端末の紛失・盗難時に遠隔でデータを消去 |
| 利用状況の監視 | OSのバージョンやセキュリティソフトの導入状況を把握 |
上記のような管理体制を構築することで、従業員の利便性を損なうことなく、企業全体のセキュリティレベルを維持できます。
④定期的な運用ルールの見直し
BYODを一度導入すれば完了というわけではありません。
企業の成長や変化、テクノロジーの進歩、そして新たなセキュリティ脅威の出現に対応するために、定期的に運用ルールを見直すことが不可欠です。
例えば、新しい業務アプリケーションの導入や、リモートワークの範囲拡大など、ビジネス環境の変化に応じて、ルールの更新が必要になることがあります。
以下のような項目を定期的にチェックし、必要に応じてルールを改定しましょう。
| 見直し項目 | チェックポイントの例 |
|---|---|
| 対象デバイス | 新しいOSのバージョンに対応しているか? サポート終了のOSを利用していないか? |
| 利用アプリケーション | 業務で利用するアプリに変更はないか? 新たなシャドーITのリスクはないか? |
| セキュリティポリシー | 最新のセキュリティ脅威に対応できているか? 従業員の理解度に問題はないか? |
| 費用負担 | 通信費の補助額は現状に適しているか? 従業員からの不満はないか? |
少なくとも年に1回、あるいは事業環境に大きな変化があったタイミングで見直しを行い、従業員に周知徹底することで、BYODを安全かつ効果的に運用し続けることができます。
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BYODに関するよくある質問3つ(Q&A)
最後に、BYODに関するよくある質問に回答していきます。
気になる項目がある方は、ぜひ参考にしてください。
①個人端末の通信費は会社が負担するの?
BYODを導入する際の通信費の負担については、法律で明確に定められておらず、会社と従業員の間で取り決めるのが一般的です。主な負担方法は以下の3つのパターンがあります。
| 負担方法 | 内容 |
|---|---|
| 会社が全額負担 | 従業員の負担はない。会社側が全額負担でコストがかさむ。 |
| 従業員が全額負担 | 会社側のコストは抑えられる。一方で従業員の不満につながる可能性がある |
| 会社と従業員で分担 | 公平な負担方法。一方で業務と私用の切り分けが難しいという課題がある。 |
どの方法を選択するかは、企業の考え方や従業員との合意によって決まります。
トラブルを避けるためにも、BYOD導入前に費用負担に関するルールを明確に定め、従業員に周知しておくことが重要です。
②社員が機種変更した場合の対応は?
社員が機種変更した場合の、企業側の対応は以下のとおりです。
| ステップ | 対応内容 |
|---|---|
| ①旧端末 | 業務データやアプリを完全に削除する。MDMで遠隔削除するのが確実です。 |
| ②新端末 | 新しい端末に再度MDMを設定し、業務に必要なアプリや設定を適用します。 |
トラブルを避けるためにも、BYOD導入前に費用負担に関するルールを明確に定め、従業員に周知しておくことが重要です。
特に重要なのは、端末の初期化だけではデータが復元される可能性も考え、MDMツールを利用して会社の管理下にある業務データを遠隔で確実に消去する仕組みが不可欠と言えるでしょう。
また、新しい端末への移行手順もマニュアル化し、社員に周知しておくことで、スムーズな移行とセキュリティレベルの維持が可能になります。
機種変更は予測できないタイミングで発生することもあるため、いつでも対応できる体制を整えておきましょう。
③退職時に情報はどう扱う?
退職者が業務用に使用していた個人のデバイスからは、企業の機密情報や顧客情報を速やかに削除する必要があります。
BYODを導入する企業は、退職時の情報漏えいを防ぐために、あらかじめ明確なルールを定めておかなければなりません。
具体的には、従業員の退職が決まった際に、以下の対応を徹底しましょう。
- 対象デバイスから業務用データを完全に消去する
- 業務用アプリケーションやソフトウェアをアンインストールする
- 企業システムへのアクセス権限を速やかに無効化する
退職時のデータ取り扱いルールは、入社時やBYOD利用開始時に従業員へ周知し、同意を得ておくことがトラブル防止の鍵となります。
まとめ
BYODはコスト削減や柔軟な働き方のメリットがある一方、セキュリティリスクや管理の複雑さが課題となります。
一方で、法人携帯は企業が端末と通信を一括管理できるため、高いセキュリティと運用のしやすさが大きな強みです。
特に重要な情報を扱う企業やセキュリティ対策を重視する場合は、法人携帯の導入が最適な選択と言えます。
安全な環境づくりのために、ルール整備や管理ツールの活用、従業員教育と合わせて法人携帯の導入もご検討してみてはいかがでしょうか。
